ポテトサラダの食中毒事件について、食品会社の中の人の意見を書いてみる。

最近話題になっている、“ポテトサラダを食べてO-157に感染”したと報道されている事件。感染された方が一日も早く回復されることを祈るばかりですが、食中毒事件としてはそこまで大きな規模でもないのにクローズアップされているのは、感染源が日本人が大好きなサラダメニューである“ポテトサラダ”の可能性が高い、ということが原因でしょうか。

実は、私は食品会社に勤務しており、しかも今回の総菜としての“ポテトサラダ”を扱う、食品スーパーマーケットの惣菜部門との取引も担当していることから、この事件は他人事とは思えないのです。こういった類の事件が起きる度、“食の安全”が議論され、コメンテーターのあるべき論が展開されますが、供給側の意見が黙殺されることが多いので、この事件について業界人としての意見を書いてみたいと思います。

“ポテトサラダ”そのものが悪い訳ではない

大前提として、ポテトサラダが悪いわけではありません。ですが、こういった報道がある度に感染源になった食品そのものが敬遠されることが多いと感じます。ある程度良くないイメージを持たれるのは覚悟していますが、それでも日々、安全・安心を心掛けて真摯にポテトサラダを製造している側にとっては死活問題と言えます。

某ファストフードチェーンにおいて、汚染食肉問題や異物混入問題がきっかけで、急激な業績悪化を招いた事件は記憶に新しいです。全国どころか全世界で展開する強力なブランド力は、そういったマイナスイメージの伝播にも強く働きます。最大手ですら会社存続に関わるダメージを受けているのに、風評被害で自分たちが悪い訳でもないのに商品が売れなくなる。これ以上の悲劇はありません。

そもそも安全・安心な惣菜

経済的なダメージに加え、今回の事件ののち、企業イメージやメニューの人気が落ちること、もう少し大きな視点で言えば惣菜業界自体のイメージが落ちることは、日本人の食文化・食生活の水準低下に直結します。惣菜業界はここ10数年で急激に発展してきました。過去、主婦が惣菜を利用することに罪悪感を感じていた時代はとうに終わり、料理をする時間のない働く女性や、手軽に美味しいものを食べたいグルメな人を満足させることのできる惣菜は、今ではどこのスーパーマーケットでも扱われています。

食品会社は、人の命に直結する“食べる”という行為が前提の商品を扱うため、誠実な会社が多いです。とりわけ、急激に品質の劣化が起き、なおかつ機械化・自動化しにくく、人の手をかけなければならない惣菜を扱う会社は、そういった考えが抜きんでていると感じます。大きな視点で見ればスーパーマーケット全体の10%程度の構成比しかない=市場規模が小さいですから、誠実ではない食品会社や惣菜メーカーは生存競争に勝てず大部分が淘汰されてきたと考えて問題ないでしょう。

事実でしか語れない食品会社の苦悩

異物混入や体調悪化といった苦情を受けることは珍しくはありません。しかし、一度商品を出荷してしまうと、その後の商品の扱われ方が異なるため、品質の保証は完全にはできない、というのが食品会社勤務者である私の本音です。異物についてはともかく、体調悪化の苦情はいつも対応に苦慮しています。

特にサラダのような非加熱食品は冷蔵(保存温度10度以下)が前提ですが、過去の調査の結果、故意であってもそうでなくても、スーパーマーケットの配送センターに納品した後や、購入後に10度を超える温度で保存されることも皆無ではありません。

ですが、商品の流通経路と保管状況を完全に追跡できるわけではないので、病状と現物、それに控えサンプルの検査結果に基づいた対応しかできないのです。今回の事件では、現時点で検査結果は「検出せず」でした。状況から考えると、遠く離れた店舗の利用者からも感染が確認されていることから、当初報道のあった運営店舗の可能性は低いと感じますが、今後もこの事件の行く末を見守りたいと思います。

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